純、開発秘話④ ~新発想のパッケージ開発~


鱒寿司の容器をゼロから考える

「最高に美味しい鱒寿司」

というコンセプトで新商品用開発が進み、
最大の懸案であったサクラスはマ奇跡的に調達可能に。

じゃあ容器・包材はどうするよ?

今までと同じわっぱでいくべきか?

刷新すべきか?

という問題。

「材料も容器も、昔ながらの姿で!」というなら、何も考えずにわっぱのままでよし。

在庫流用できるし、物凄く楽。

「それが伝統の姿です」といえば恰好もつく。

が、

いかんせん時代は流れて少食化、個食化の時代に突入。

1重=1人前ではなくなってきた。

包材の値段も熱烈高騰中。

よって、どうせ新商品開発するなら、わっぱが抱える問題は断ち切りたいと思い、

ゼロベースで無駄なく、ニーズにマッチした容器を開発する事にしました。

色々可能性を探った上で伝統の形になるなら、それはそれでよいかなと思いつつ、

まずは現状の整理から始めました。

 

包材(わっぱ)が抱える問題

店頭で販売していてたまに聞く「お客様の声」を集約すると、
問題は大きく2つ。

①1人分には多すぎる

②食べ終わると捨てづらいゴミが多い(竹、木材、厚紙のパッケージ)

「わっぱに笹、竹」は伝統の美。

風情があるし、綺麗なんだけどねー

若干、過剰包装かなと。

これを解決するためにデザイナーと打ち合わせる中で、

結構な覚悟がいる作業だよね?

って事がわかり、まずは容器の課題を下記4つに分けて精査することにしました。

①容量

②材質

③形状、色

④将来性(価格変動への耐性)

①鱒寿司の容量 ~適正サイズは何g?~

鱒寿司1重って、何人分?

っと良く聞かれます。

昔は「1重で1人分」だったようですが、

小食化が進んだ現代では、1人分にしては多いような気がしてました。

重量対比としても、

コンビニおにぎり : 110g/個

お茶碗並盛 : 140g位

吉野家の牛丼(大)  : ご飯320g + 具110g

鱒寿司 1重 : ご飯310g+ 魚90g~100g

吉牛の大盛りとほぼ同じ。

対象年齢にもよるが、やっぱり1重は1.5人前だよなという結論に辿り着く。

よって、新商品は「お一人様サイズ」にすべく、

「ご飯220g=おにぎり2個分」

にで作成することとしました。

 

②容器の材質は木製?紙製?

「お一人様用」と容量は決まった。

では容器の材質をどうするか?

これは形状と密接に関係してくるが、それよりも、

・わっぱ(ファルカタ)でなければならない理由はあるのか?

・笹は必要なのか?

という点を試作・試食を重ね検証してみた。

1、よく言われる「木材はシャリの余計な水分を吸う」という意見、
シャリがほのかに温かい状態ならば影響は出るように思うが、
完全に冷めきったシャリの場合はそこまで味に影響がないと感じた。

2、関西、金沢の棒寿司、押し寿司は木製の容器に入れていない。

3、そもそも鱒寿司のわっぱは「江戸まで献上するための保形性」を考えた上で、木製容器だったのでは?と考えている。笹はその際の防腐剤・・・と。

 

よって、味において必然性が無い為、捨てやすく、値段の変動の少ない「特殊紙」で新容器を作成する事にした。

笹に関して、当店の消費期限は通年で製造翌日まで。
防腐剤はいらんと思う。

どちらかというと笹の香りを付けるかどうかが争点となる。

個人的には笹との接触時間の長さ、笹の個体差で香りが変わってくる=味がコントロールできなくなる要因だと思っていたので、この機に排除する事とした。

夏場は笹が原因で寿司が劣化する事例も起きているため、不確定要素を排除、
均一性が高まると考えている。おります。

③形状、色

これは結構サクッと決まりました。

1、「材質はちょっと丈夫な紙」と決まった時点で丸くはできません。

2、笹を使わないと決めた時点で、丸くはできません。
※わっぱで笹なしの場合、笹に代わる緩衝剤が必要。

よって正方形か長方形という選択肢に。

個々は単純に、高田やは昔から長方形の寿司を作っていたので、

均一に圧力がかけやすいという事もあり「長方形」になりました。

色は数パターン試した結果、

「淡いサクラマスを色が映える色=黒」になりました。

新容器を桐箱で作ってみた所、パステルカラー同士が被ってなんだか弱い印象に。

よって、新容器は長方形で黒!に。

「圧力」に関しては「何故、鱒寿司は丸いのか?」からが始まるので、別の機会に投稿させて頂きます。

 

④将来性(価格変動への耐性)

実は、2013年から比較して包材費用が高騰しております。

・わっぱ : 木材の価格高騰のあおりを受け値上がり中。

・笹 : 新潟で数年続いている異常気象で収穫量大幅減&需要の先細り&後継者不足、人で不足でほぼ倍に。

・竹 : じわじわ値上がり中。北陸で竹製品作っている所も少なくなっており、今後が不安。

わっぱ、笹は中国産を始め、海外産も入ってきたが、漂白、着色が気になるので、国産以外の選択肢はない。

そうなると、業者の廃業リスクを抱えつつ、値上がりに耐えるという状態に。

それはさすがに怖いので、

・為替の影響をうけない

・値段変動の可能性が低い

・国産、できれば富山産

な新容器にすべく、パッケージ会社のH社長と試作を繰り返す事、約1年。

まだまだ課題は残っていますが、とても美しい容器ができあがりました\(゜ロ\)(/ロ゜)/

ただ、製造サイドで致命的な欠陥があります。

完全フルオーダーの特注品なため、

蓋は自作しなければなりません・・・・・・・

ご購入いただいた皆様、蓋の桟(さん:三角形の部分)にご注目下さい。

寿司作るよりも時間かかってます。

外注すると寿司の値段がスポーンと上がるので、自ら組み立てております。

ウマい寿司を作りたいのであって、高い寿司が作りたい訳ではないので、

見えない部分でのコストカットは今後も徹底していきます。

蓋、組み立て作業はこれまた別の機会にアップしたいと思います。

 

 

新容器、完成

以上、数々の失敗を経て、

・ゴミが少ない

・サクラマスの色が映える

・お一人様サイズで

・加圧に耐えうる

美しい容器が仕上がりました!